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ポルトガル編


 セントレアを3日の朝10時に出発して、12時間ほど飛行機に乗っているのに同日の午後2時過ぎにフランス、ドゴール空港に到着する・・・何故だ!。時差は8時間。分かっていても身体が付いてこない。そこから乗り換えてポルトガルのリスボンに到着したのが5時。日本との時差はさらに増えて9時間。時計を戻す。ホテルに向かい休憩後夜の8時から食事・・・今日だけで5回目の食事である。食事を終える頃には全員もうフラフラ・・・無理もない、日本は今頃朝の5時だ。超グッスリ眠る。

 翌日の日程は朝10時まで自由時間。7時に朝食をとり、さっそく街に散歩に出かけようとホテルのロビーに行き、「ボンジア、テン マッパ デ シダージ?」と言ってやったら、なんと通じた!。おはよう、市街地図は置いてありますか?と言ったのだが、ちゃんと地図をくれた。調子に乗って「ここはどこだ」「どういったら中心街に行けるか」とか聞いてやったら、ちゃんと教えてくれるではないか(当たり前!)。すっかりハイになり、私は朝焼けの町に繰り出した。

 坂の多い街である。こんな電車があり、坂の上まで連れて行ってくれる。それにしても町並みが美しい。道は全て石畳だし、家の壁は白を基調に薄い黄色、ベージュ、パステルピンクぐらいに統一されている。歩く人々もラテン系でそんなに背が高くなくて威圧感もないし、表情も穏やかだ。中国の町を歩いている時のような緊張感もなく、押し売りもいない。私はすっかり楽しくなってセントロの広場まで写真を撮りながら歩いた。

 今回の旅の目的は「パリダカールラリー視察旅行」という一風変わった旅である。詳しい説明は省くが、要はトヨタ車体チームのスポンサーになった企業が招待される旅行だ。だから予定としては明日4日がラリーチームの壮行会、その後車検場に向かい車検を見学。翌5日のラリースタートを全員で応援しながら見送り、第一ステージの目的地ボルチモアまで行って泊まり、そこから第二ステージのチェックポイント、スペインのマラガまでついて行く・・・という、けっこう珍しい目的を持った旅行だ。ラリーの応援をしながらところどころ観光地めぐりをするのである。パリダカールラリーだからパリが出発ではないのかと誰でも思うが、排ガスや街の規制などでパリの街からの出発が困難になったため、3年前からここリスボンに変更になったという。だから正確に言えばリスボンダカールラリーであるが、ことし30年を迎える歴史あるラリーだから「パリダカ」という通称が有名になってしまっている。

 もちろん全員ではないがこんなもの(なんだったっけ?忘れた)に乗っている警官がいたのでパチリ。写真とっていい?、どうぞ!アリガトーね!なんて簡単な会話でもできるのが本当に楽しいし、懐かしい。そう、私すっかり昔の若い頃の自分に戻っていたのだ。ブラジルでもこうやって良く街を歩いた。きしくも35年も経って同じ言葉を話すポルトガルに来ているということが、なんだかとても自分を高揚させてくれるのだ。水溜りを足で踏んで思わず「ノッサ セニヨーラ!(やれやれ!)」なんて言葉が自然に出てきてしまう。・・・ううむ、勉強はやはり若いうちにやらねばならないことを実感。

 翌4日、パリダカチームの出陣式、壮行会がとあるホテルの専用会場で行われた。昨年優勝(無改造ディーゼル部門)の三橋ドライバー、年季の入ったフランス人ドライバーのラテ・・・会社の社長以下重役も含めて総勢100人以上だ。そして挨拶や紹介が終わり、昼食を兼ねたパーティーへと移行した直後に・・・

 こんな具合に広報部長から突然のラリー中止が告げられたのである。

はぁ〜?ラリー中止ぃ???!

 全員からどよめきが漏れ、ざわついた雰囲気がやがて失望の沈黙に変わっていった。俺たちっていったい何しに来たの?しかし考えてみれば選手のほうがもっと可哀想だよなぁ・・・なんとなく落胆した雰囲気のまま記念撮影が行われ、とりあえず全員で車検会場のジェロニモス修道院前広場まで行くことになった。

 本来ならここで出発し、我々は横の観戦席で盛り上がるはずだった。すぐ横に車検会場があり、エントリーしていた車が並んでいる。なんとも不思議な雰囲気の中、車検も行われないのでのんびりと時間を過ごす。

  横でやっていたモトクロスバイクショー。

空しく並ぶトヨタ車体ランドクルーザー

ある意味でもっと悔しい三菱チーム(改造部門連覇中)

 しかしこれだけの大会を中止させたアルカイダ・・・フランス人旅行者4人をモーりタリアで殺害し、なおかつフランス人をダカールラリーで狙う・・・これが中止の理由というが、何のために何をもって何を犠牲にすれば満足するのだろうか。ラリーを中止させて喜んでいるのなら、まったくもって無粋この上ないヤツ らである。

 それにひきかえこの釣り人の幸せなこと。魚釣れた?って聞くと唇を結んでゆっくりと顔を振って笑う。狙いはスズキだろう。餌にはゴカイを付けてのぶっこみ釣りだ。なにやら同種の人間に出会うとホッとする。夕刻ホテルに戻り、食事は8時から。3時間ほど時間があったので再び一人で街の路地を散歩することにした。

 街は新年の飾り付けや大売出しできれいにライトアップされて賑やかだ。こちらの人は食事時間が遅く(昼食時間が遅い・・・大体2時から4時くらいが昼食だ)夜も遅い。私は服でも買ってやろうといろいろ店を覗いたが、結局買い物は出来なかった。装飾品や服は私のもっとも苦手とする買い物である。ミナマリやじょしゅと一緒だと「これなんかどう?」とある程度選んでくれるからやりやすいが(と言って私の意見が通ることは殆どないが・・・)、一人だとまったく歯が立たない。何をどうしてどう選ぶのかがまったく分からないのだ。じょしゅを連れてくるべきだった・・・と後悔したのはこの時だった。買い物だけでなく、やっぱり一人より二人のほうが楽しいに決まっている。もう一人で海外に来るのはやめよう・・・。

SALDOSは残り物って言う意味で、セールのこと

これが本場のポートワイン・・・真ん中のは68ユーロで10000円超

 少し疲れてバールに入りビールを一杯。こんなことぐらいしか出来ない。簡単な言葉は分かるが隣の人々の会話は分からない。リスボンロンリーナイトとはこのことだ。だれかメンバーの一人を連れて来ればよかった。しかしこの時点ではまだ皆初対面ばかりで、そんなに親しくはなかったのだ。

 夜の食事はファドというポルトガル独特の音楽を聴きながらの食事だ。小さな店で小さなステージ、ギュウギュウ詰めの客席はなかなかの風情である。そこでマイクも使わず生の演奏や歌やダンスが行われる。8時から10時ごろまで楽しんでホテルに帰る。ワインの飲みすぎでバタンキューであるが、夜中に目が覚め、そのあと眠れない。時差ぼけってヤツだ。仕方ないのでニンテンドーのDSでドラクエWをやって過ごす・・・こういうこともあろうかと持っていったのだ。正解!。

 次の日は本来ならスタート日だがラリー中止で近くのロタ岬に行った。あいにくの小雨模様だったがヨーロッパの西の果てだ。そのあとなんたら修道院のある街に行き、時間を潰す。ガイドが教えてくれた地元の安いワインのヴィーニョベルデを4人で飲む。一杯1ユーロ(160円)だがさっぱりしていて美味しい。あとでスーパーで値段を見たらボトルで2ユーロだった。ぼろ儲けだ。

 ポルトガルの町はなんとなく飽きない。風景も人も、なんとなく親しみを感じるのは私が以前ポルトガル領だったブラジルの街を知っているからかもしれないが、それ以上に・・・なんと言ったらいいのか、心が落ち着くのだ。出来ればもう一度行きたい国である。 このあと街の名前は忘れたが昼食に寄った日本料理レストランの「彩(あや)」・・・この店の刺身、てんぷら、焼き魚・・・全てが大変旨かったのを書き加えておこう。特にマグロの大トロ・・・絶品でした。

 ホテルはもう予約してあるのでポルトガル南端のボルチマオに宿泊。季節はずれのリゾート地で、夏の人出はすごいところらしい。見える海は大西洋だ。気候も温暖で、写真は朝の7時ごろだが18℃ぐらい。海岸にそって木道が作られ歩きやすい。本当ならこのホテルの近くでラリーのチェックポイントが設けられ、多数のラリー車やバイクでごった返しているはずだったのだ。

 ホテルの部屋のベランダからの風景。今日9時出発でポルトガルからスペインに国境越えをする。5時間以上のバスの旅だ。言い忘れたがヨーロッパでの入国審査はフランスで完了している。あとの行き来は自由である。検問もない。


スペイン編に続く

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