親不知 OFF会−1/2 20・21/07/2003
文中敬称一切省略 乱筆乱文請陳謝
獲れたてのイワガキ
越後の冬は長い。その長い冬がようやく終わりを告げ、雪融けとともにあちこちで草木が新芽を吹きはじめる春がやってくる・・・一番良い季節である。山アスパラ活二はその一番良い時期に、浮かれ、張り切りすぎて納屋の階段を踏み外して骨折した。足首の複雑骨折で、治療とリハビリに2ヶ月ほどの入院を余儀なくされたのである。その後、この一番良い時期を棒に振った男の入院姿を見学に行ったが、松葉杖を傍らに置きながらも、開き直って大変元気だった。夏の親不知のOFF会までにちゃんと治しとけよ〜と言い残して別れたが、あれから1ヵ月半、なんとか海に潜れるかどうか・・・。それでもちゃんと幹事として皆に予定などを連絡してくれたりしていたので、なんとかOFF会は開催できそうだった。去年は8月のはじめに開催して、天気も良かったのだが、今回梅雨が明けるか明けないかの7月の20日に開催となったのは、7月の終わりから北海道に行かねばならない私の予定を優先させてもらったわけで・・・果たして当日の天気予報は雨・・・ううむ、皆さまゴメンチャイ・・・という心境だった。
19日の昼前に趣味千山を出立。今回は水嫌いの魚菜が不参加である。その代わりに、前回不参加のsonetaが来ることになっていた。私の頭の中では『soneta』=『温泉』という 方程式がインプットされている。もともとポリシーの無い助手も最近sonetaに感化されて、今ではすぐに『温泉、温泉!!』と騒ぎ立てる。この点で魚菜は私のかけがえの無い味方であったのだが、今回の不参加表明で一挙に私が不利になる可能性があった。と言うのも7月はじめの打ち合わせチャットで、突如飛び入り参加することになった上越のエフ(以下nomo16)と千葉のインク・・・この二人が一体どういう人間か皆目見当もつかなかったからである。ましてや、もし悪天候であったなら・・・ま、海はやめて皆さん温泉でゆっくり・・・なんてまるでジジババの同窓会みたいなことになったらどうしよう・・・こんな不安を抱いての出立であった。
ポンスケ2号
3時過ぎには青海に着く。姫川漁港から北の海岸線をゆっくりポンスケ2号で偵察。思いのほか天気は上々。富山あたりで車が揺れるほど吹いていた南からの強風は親不知の断崖に遮られてか無風、海上もベタ凪である。夏の日本海はこれだから良い。最近の私は海を見るとそこに泳ぐ魚のことしか考えられなくなる・・・そして一番楽しいのがこの下見である。川の流れ込みやらストラクチャーを見ながらポイントを推定するのは、変な言い方だが、実際釣っているより面白いのである。何故ならこの時、頭の中では80センチを越すシーバスがもう釣れてしまっているのだから・・・ね!(笑)。で、結果はどうだったかと言うと、姫川漁港で釣れた写真のクロソイが辛うじてボーズ逃れの一匹となってくれた。去年釣れた木ノ浦川の流れ込みで2時間投げたがボーズ。これは夜を待ちきれず、明るいうちに投げたのが敗因かもしれない。
クロソイ
夜、こちらの名物のタラ汁を食おうと店を探すが、街道沿いの店はみな9時には閉まってしまう。明日の夜は車中泊になるから今夜はホテルに泊まろうと探すが、折りしも糸魚川の夏祭りとやらで満杯。仕方なく空き室のあったモーテルに泊まる。一昨年 秋の伊勢市以来のモーテルだ。そういえば同じ年の夏の青森、陸奥市でも恐山の年に一度の行事とやらでどこのホテルも満杯、仕方なくモーテルに泊まったっけ。 この時期は各地で夏祭りなどの行事が多いのだ。
7月20日
朝、待ち合わせの臨海公園まで行くと、なにやら怪しげなタウンエースが近づいてきて、中から「macさん?」と声をかけてきた、これまた怪しげな中年男・・・これが今回初登場のインクであった。住んでいるのは埼玉だが、千葉に別荘を持ち、海釣り、潜り、山菜取り、冬はわざわざ北海道に出かけて狩猟・・・とにかくなんでもかんでも獲るのが好きで好きでたまらないというアウトドアやくざである。このアウトドアやくざという称号を以前思いつき、なんとか誰かに当てはめようとしていた私は、当初一風にその称号を冠しようと思っていた。しかしどう考えても(片鱗および素質はあるものの)一風はやはり野人の称号がふさわしい。せいぜい言うならば一風雲ならぬ疾風千切れ雲・・・こんな感じである。その点インクはその条件をまったく持って完全に満たしているではないか・・・。後先を考えない行動力、釣り竿を忘れて船に乗ってしまうようなせっかち、ニタニタ笑いながら可愛らしい小鹿のバンビを撃ち殺してしまう残忍さ・・・どれをとってもこの称号はインクにこそふさわしい。また彼は出発直前のメールで「愛妻」を連れて行きますので ヨロシク、と書いてきた。で、活二も私もその愛妻とは絶対にワンコ、つまり愛犬のことだと早合点していた。なぜなら日本の男で自分の妻を愛妻と表記するのは 一万人に一人くらいだと思っていたからだ。ところがこれが、犬ではなく人間であったのだ。そのことをインクに言うと、「ちゃんと正直に言わなきゃぁ・・・」とのこと。ううむ、手ごわいやつである。で、どんな奥さんかというと、だいたいやくざの女房は美人と相場が決まっているのである。きっとなりふりかまわぬアタックでものにしたに違いない。
雑談しながら4人でコーヒーを沸かして飲んでいると、突如nomo16が現れた。こちらも二人連れである。そして挨拶もそこそこにいきなりコンビニの袋からキノコを取り出した。「コレ今日採ってきたんですが」・・・ううむ、これははっきり言ってあぶないヤツである。あの「キノコの四季」の宮川さんとも知り合いだという。これがフタイロイグチ、これがキアミイグチ、ウラグロニガイグチ・・・このキノコは毒 だといわれてますけど美味しいんですよ・・・宮川さんも食べてますから、今夜食べましょ?・・・横でインクが「ゲーッ!こんなん食えるの?!」と叫んでいる。
いきなり始まったキノコ講習会
nomo16はこのOFF会では一番若い。そして若いのに、 夫婦ともども遊んでいる。夜の数時間を仕事に当てているだけで、昼間は毎日が日曜日らしい。だから山菜取りも飽きるほどやり(実際少し飽きが来ているらしい)、キノコも年中観察している。圧巻は、話題がスキーになった時のことだ。スキーはやらないの?という私の問いかけに、「スノボーをやるんです」と答え、シーズンどれくらい行くの?との問いに、「え〜っと、6、70回かな?」と平然と答えたのである。コレには全員がたまげた。わずか4ヶ月ほどのシーズンに、近いとはいえ70回も行く・・・これはやっぱりまともなヤツではない。このnomo16、会った瞬間は一見普通に見えたのだが、やはり変人であった。・・・このOFF会には (私以外)まともな人間が集まらないようになっているのだ。
やがて一風がsonetaを乗せて三条燕から到着し、活二もまるでそれに合わせるかのように姿を見せた。そして私が考えていたことと同じ事を提案した。予定の変更である。本来今日は顔見せも兼ねて活二の実家で「カアチャン手作りの忠衛門笹寿司」を食べる予定であったのだが、今日は予報に反して天気も良く、海も凪いでいる。明日の天気は分からないのだから、潜るなら今すぐに潜ったほうが良いだろうと言うのである。もちろんこれには全員が賛成したのだが、後で聞いた話では、この提案に一番がっかりしたのは活二のカアチャンだったそうだ・・・そりゃそうだろう、今日の昼ご飯に美味しい笹寿司を食べさせようと一番張り切っていたのはカアチャンだったのだから・・・でも、なにも腐って食えなくなるわけではない。笹寿司の色は少し褪せるかも知れないが、笹の葉の香りはむしろ作りたてより滲みこんでくれるだろう。
そんなことで我々は海に出発した。今回は女性の参加も多いので昨年のように断崖を階段で降りるより出来る限り車で海辺まで行きたい。昼食会も海辺でやりたかったからだ。活二の案内で海岸に下りる秘密ルートに到着したものの、狭いすり抜け道をホイルベースの長い私のポンスケ2号がどうしても通れない。一風とインクの車が通り抜けた後ふと脇の別ルートを見るとコンクリートで重石をつけたガードレールで道を塞いであるだけではないか・・・。こんなもの車で引っ張れば簡単に動く。何か引っ張るものは・・・と言いかけるとやはりアウトドアやくざがすでに鎖を手にして車から降りてきた。一風が車で引っ張ると簡単に動いた。地元の活二がハラハラしながら成り行きを見ている姿が少し痛ましいが、自分の起こした行動に自分で責任を持つと言う自覚さえあれば、こんなことはたいしたことじゃない。
砂に埋まったインクの車
で、せっかく皆が力をあわせて海岸線に近づいたのに、インクの車が砂地に埋まって動けなくなった。あまりに滑って動かないのでインクに聞くと、これは2WD車であると、平然と笑っている。当然4WD車だとばかり思っていた私は、その無謀さにあきれた。仕方なくみんなで押し、少し動いたところで後方の私の車で引っ張り上げたのだが、今まで彼は砂浜や山道で埋まったことが無いのであろうか・・・それとも埋まってからそれを引っ張り上げることを彼は楽しみにしているのであろうか・・・インクさん、4WDを買いなさい。
さて、てんやわんやで潜った海は、波こそ無かったものの透明度が低かった。数メートルの深さになるともう底が見えなくなる。こんな時はもう沖の根に張り付いて探すしか獲りようが無いのである。
100mほど沖合いの岩でカキを探す photo by 一風
一昨年に一風に笹川流れで教えてもらい、去年この海でしっかり覚えたイワガキはすぐに私の目に飛び込んできた。大型のナイフを岩とイワガキの間のわずかな隙間に差込み、剥がすのだが、これがなかなか難しい。一風は小型のバールを手に持ち、強引かつ器用に剥がしている。試行錯誤を繰り返し、しばらくやっていると・・・だんだんコツがわかってきた。カキは形状が湾曲しているが、その外側を剥がそうとしてもまず絶対に剥がれない。逆に湾曲の内側のある一点にナイフを差込み、剥がすと、いとも簡単に岩から外れるのだ。フムフム、なるほど・・・。こんな小さな進歩がむしょうに楽しいのである。夢中になってカキを剥がしてはゴムボートに放り込んだ。ふと見るとゴムボートの上でsonetaが青ざめた顔をしている。どうしたのかを聞くと、シュノーケルのせいでずいぶん海水を飲んでしまったようだ。私に言わせればそれはシュノーケルのせいではないが、素潜りに慣れていないと良くあることである。
バテて死にそうなsoneta photo by 活二
何とかボートで陸に上がったsonetaはしばらくテトラポットの上でノビていた。写真の若草色のライフジャケットが何故かカワイイ(笑)。ちなみにこのゴムボート、4人で乗ったらまったく進まなかった。だから私と助手は泳いで帰ってきている。その後はほとんど一風一人の腕力で進んできたようだ。