9/22
初秋の飯豊山
昨日雨が降り、気温もぐっと冷え込んだ。本当は3日4日後がキノコ採りのベストだろう。
朝、約束どおりに7時に食堂に下りていくと、いたいた・・・あそこでご飯よそってるのがo_kirakuさんだ。すぐに分かった。前もって写真を送ってもらっていたのだが、その写真というのが大きなマツタケを両手に持ってニヤケている写真で、おまけに長髪でメガネ無し。今日はやや延びかけた坊主頭でメガネをかけていて、写真とはずいぶん違ったが、すぐに分かった。えらいものである。
昨夜一風氏が預けてくれた地図を手にして打ち合わせ。知らない土地をやみくもに歩いても労多く益少なし…のことが多い。こんな時は少しでも手がかりが欲しいものだ。8時出発。
9時過ぎに到着した飯豊山の駐車場に溢れる車にビックリ。後で分かったのだが、登山客と釣り人であった。だから朝が早いのだ。
とりあえず、一番近い沢伝いに登り始めるが、草地でキノコもろくに生えていない。途中サルナシの実がたわわに実っている。
齧ってみるが、酸っぱい。しかし果実酒にはこれくらいの実が良いらしいと聞いたので、少し袋に入れる。
おかしい。道が下っている。変だなぁ…と言ってるうちに、元の道に下りてきた。何やってるんだか。谷川でお婆さんがなにやらゴソゴソやっている。覗いてみると、ミズのムカゴを束ねている。ミズとは「ウワバミソウ」のことだが、秋になると葉っぱの先端の付け根部分にムカゴ(タネ)がつく。私は知らなかったが、o_kiraku氏に言わせると、それがけっこうイケルらしいのだ。さっそくもらって食べてみると、ヌルリとした粘りがあって、癖も無く、たしかにけっこうな味がする。醤油漬けにすると美味しいらしい。お婆さんはなにやら早口で喋ってくれるのだが、はっきり言って時々単語が分かる程度で、殆ど聞き取れない。村上市の人で、近くのスーパーにこのムカゴが1パック300円で売られている…ということらしい。マイタケの話をすると、『マイタケはここにゃネエ、朝日のほうにイカねっと…』ということで、今度は天然マイタケがいかに途方も無く高く売られているかということを説明し始めた。
我々は地図看板を見直し、今度は直進方向に歩くことにした。ま、今日は新潟の山にご挨拶だ。なんと言っても本番は明日なのだ。のんびり行こう。
見飽きるほどのブナ林である。トチノキも多い。それこそふた抱えもあるようなサワグルミが谷沿いに生え立っているが、ミズナラが無い。しばらく行くと左手にブナの倒木があり、そこにツキヨタケが生えている。いつ見ても旨そうな菌だ。知らなきゃ絶対食べるよな、これなら。とくに幼菌の美味そうなことといったら…。
こうやって割ってみると、付け根の部分に黒いシミが出る。これが特徴だ。黒いシミが毒という訳ではないので、この部分を取って食べてもアタル。日本で一番中毒が多いキノコである。
同じ木の別な部分にウスヒラタケが生えていた。こちらは癖の無い、美味しいキノコである。味噌汁などに入れると良い。
道がやっと登山道らしくなってきたが、相変わらずキノコが無い。フンヅケ(どうでもいいキノコ…踏んづけて歩く…という意味)すら生えていない。o_kiraku氏が「ナラタケ…ナラタケ…」とうわ言のようにつぶやきながら歩いているが、それも無い。そのうち馬鹿でかいブナの倒木で弟子が「キクラゲ???」と叫んだ。
そう、紛れも無いキクラゲである。どちらかというと春のキノコだから、珍しいともいえる。ナイフで切り取るようにしてけっこうな量を採った。横にニカワハナビラタケも生えている。倒木を探せばいいのだから、木に生じるキノコは割りと探しやすいと言えるだろう。
明日一風氏は我々をどんなところに連れて行くつもりであろうか…ひょっとしたらとんでもない急斜面やら沢を歩かされるのではないだろうか…なにせ彼は野人であり、原住民である。明日のために体力を温存しておく必要があるのではないか?…こんなことを三人で喋りながら、昼を過ぎたあたりで下り始めた。よく考えたら弁当を持っていない。
3時ごろ、近くの温泉に行った。o_kiraku氏は「キノコの会」にも入っているが、「温泉同好会」にも所属している。温泉を一日に10軒回ることもあるそうだ。はっきり言って、ここまで来ると、o_kitigai氏である。なにやら、駅の切符を買って歩く、鉄道マニアにも似ている。しかしその温泉を語る時の笑顔につられて、泡の湯という一軒宿の温泉でビールを飲み、蓬蕎麦を食い(けっこう旨かった)、風呂に浸かった。そして一風氏の待つ、村上市へと向かった。明日は朝日スーパー林道だ。マイタケにめぐり会えるだろうか…。