『マイタケ序章』
春も忙しいが、秋の忙しさはまた格別である。短い秋の日をどう有意義に過ごすか…これは私の永遠の命題である。考えあぐねてついウトウトと寝てしまったりして…。
夏の初めにリンク仲間のo_kiraku氏の掲示板に書き込んだ。9月の終わりごろ一風氏を誘って「白神山地にマイタケを探しに」行こう、と。これは口にするだけでゾクゾクするような提案であった。広大なブナの森を歩こうというだけでも気が遠くなるような興奮を覚えるのに、さらに「マイタケ」という別格で超特級なキノコをそこで探そうと言うのだから、これはもう興奮のあまりぶっ倒れるような、提案なのである。当然o_kiraku氏はその提案に飛びついてきた。その反応は、秋に河口にわく新子ハゼが小学生のたらした釣り針にパクッ!と食いつくよりも、素早かった。
仮にもキノコを趣味としてる以上、マツタケ、ホンシメジ、マイタケという御三家には必ず出会っておかなければならない。私はキノコと遊び始めて9年目で、o_kiraku氏は5年。二人とも未だマイタケには遭遇していない。
逆にマイタケ採りベテランの一風氏の反応は面白かった。彼は9月の初めに新店舗を開店しなければならないのである。まったくの新規開店だから人も雇わねばならぬ。超忙しいなか、2泊3泊でマイタケ採りになんぞ浮かれていられるはずも無い。行きたいけれど行かれない…こんな時人はストレスのあまり気が狂う。一風氏もハンドルネームを突風とか旋風に変え、呪いの書き込みをしまくった。その呪いに当たったのか私のPC教室のインストラクターが26歳という年齢にもかかわらず、なんと自分の子供の水疱瘡をうつされ、顔中がブツブツになり、10日も休んだ。…その間私は朝から一日中代理の先生をやらねばならなかったのだ。遊び人が遊べない時の恨みは本当に恐ろしい。
さて、私は夏に東北旅行の途中、その白神を偵察してきた。東北旅行記にあるとおりだ。しかし私が登った二つ森にはブナばかりで、ミズナラが殆ど無かった。ましてやマイタケが生えると言われるふた抱えもあるような太いものなど皆無である。生えているブナも細い。帰ってから…私は考えた。そしてどう考えても自力でマイタケを発見するというイメージが湧いてこないことに気が付いた。調査不足は当然だが、結局一風氏が勧めてくれるように、「マタギ」を雇うという手もあるが、それはなんとなくしっくり来ないし、マタギがマイタケのありかを教えてくれるという保証はまったく無い。であれば、行き当たりばったりで自爆撃沈するか…どう推測してみてもマイタケ発見!と喜ぶ自分の顔が想像できないのである。
私は考えに考え、ついに素晴らしい提案を思いついた。そしてo_kiraku氏にメールを送った。要点は次のようなものである。
白神山地のマイタケ探索は取りやめる。
代わりに(一風氏のホームグラウンドの)朝日スーパー林道に行こう。
そして一風氏に「来年は来ない」という約束のもとで、マイタケのシロを教えてもらおう。彼は今年はどのみち行けないのだから、たぶん快諾してくれるであろう。
そこで我々は生まれて初めてのマイタケに遭遇するのである。
o_kiraku氏は無論意義なし。私は次に一風氏に「悪企み」と題して計画をメールで送った。一風氏は予想通り快諾してくれ、いろいろな地図やら説明を懇々と書いてきてくれた。実にもって面倒見の良い、イイヤツである。そして「何とか一日なら、付き合えるかも…」と書き加えてきた。実はこの一言を引き出したくて、私はこの提案をしたのである。白神山地ならいざ知らず、目と鼻の先に攻撃部隊が現れて、迎撃しないはずが無いではないか。「根っからの好きモノ」を見抜いた私の作戦勝ちであった。
日程は次のように決まった。
9/21 22 23 24 25 o_kiraku 湯平 飯豊 朝日 秋山郷 お仕事 mac3 お仕事 飯豊 朝日 秋山郷 飛騨 一風 お仕事 お仕事 朝日 お仕事 お仕事 なんと言っても23日がメインである。私は21日夕刻に岐阜を発ち、夜の11時半過ぎに新潟駅に到着し、先着のo_kiraku氏が泊まっているホテルに車を付けた。途中長野でo_kiraku氏から電話が入り、今日の新潟は一日中雨だったようだ。心配する無かれ、私はメチャクチャな晴れ男なのである。