《キノコOFF会顛末記》 H14/10/13.14
ミズナラの木の上で記念撮影(やはり魚菜が一番高いところにいる)いよいよ私にホスト役が回ってきた。昨年から今年にかけて新潟、長野と一風のテリトリーを巡回してキノコやら山菜やら花やらを楽しんできた。そして夏はレポートしたように活二のテリトリーを案内してもらい、海を楽しんだ。だから今度は一度私の縄張りに案内し、楽しんでもらわなければならない。これがアウトドア中年隊の作法というものだ。私は礼儀正しいのだ。
日にちを決めるに当たっては過去のキノコ狩りの戦果を参考にして、10月13、14日の連休とした。これは皆が勝手にそれぞれ私に注文を出してきたことにも由来する。一風はホンシメジ、魚菜はベニテングダケとコウタケを、そしてsonetaはあろうことかオオムラサキアンズタケというマニアックな注文を出してきたのである。ホンシメジが少し遅い気がするが、あとは多分この日にちあたりがドンピシャだろう…しかしこればっかりは天の配剤、行ってみなければ分からない。雑木林と松林の2箇所を回ることになるが、ま、なんにも採れないってことは無かろう…。なお今回、活二は不参加。なかなか連休が取れないらしい。
ところで私と魚菜とsonetaは12、13、14と3連休だが、店があって忙しい一風は13、14の参加となる。で、雑木林、松林のキノコ狩りの本番を13日に決め、14日は一風の帰りのこともあり大白川のブナ林を案内するとして、問題は12日をどうするかである。東京から岐阜へ、sonetaがウキウキの温泉気分でやってくることは目に見えている。しかしハッキリ言って私と魚菜は温泉めぐりをするくらいならお魚チャンと遊んでいたい…と言ってまさかsonetaを一人にしておくわけにも行かず…この葛藤を胸に抱きながら9月の終わりに活二のHPのチャットルームを借り、皆で打ち合わせをしたのである。この時我々のほかに姫、ミセスラベンダー、ヤマボウシの女性三人組ともう一人『トマト』という可愛らしいHPを持っている奈々子も参加した。最初はおそらく4人とも冷やかしのチャット参加であったろうが、結局…詳しい状況説明は省くが…打ち合わせが終わってみれば姫、ラベ、ヤマの三人組は12日にsonetaとともに温泉めぐりをすることになり、奈々子は14日に趣味千山にてこのOFF会に合流することになっていたのである。以前sonetaが三重県を訪問した時に会おうと言っていて、突然の身内の不幸で参加出来なかった奈々子はともかく、三人組は私の企みにまんまと引っかかった感がある。そう、どうしても12日に釣りをしたかった私はsonetaを3人に押し付けたのである。あとで考えてみたが、sonetaも3人も、それぞれに大変だったろうなぁ。なにせ初対面で温泉めぐりだもん。ま、しかし、こんなこともたまにはいいだろう。適当にやってくれ…私は結構無責任なヤツかもしれぬ。
そんなこんなで12日がやってきた。私と魚菜は11日の夜に志摩出張所で泊まり、早朝出航した。しかしながらsonetaをオンナ三人組に預けた無責任な悪行が祟ったのか、外海は大荒れであった。恐怖の中、早々に引き返し、内海でジギングをするが結局ボーズに終わる。しかし無理をして外海に出なくて良かった。翌日、同じ志摩沖で漁船とプレジャーボートが転覆し、4人が死んでいる。海は怖いのだ。
釣れなかったから、帰り道魚屋に寄った。ヨコワ(ホンマグロの幼魚…と言っても3、4Kgはある)が置いてあったので買う。あとはアオリイカとアンキモ…明日の夕餉の準備である。自分たちの釣った魚なら言うことはないが、仕方がない。死ぬよりはマシだろう。
3時には志摩を出発し、夕方岐阜に着く。soneta様御一行の到着は予定を相当オーバーするようだ。なにせほとんど運転ということをしたことがないヤツがあの御嶽山の山道を運転しているのだ。崖から落ちなければ良いが…と心配していたが、後で聞くと3回ほどボコボコぶつけただけで(!!!)済んだようだ。結局温泉3ヶ所を回ったsoneta一行と夜の8時頃に関市で落ち合い、喫茶店で休憩し、私の車にsonetaを積み込み、趣味千山に向かったのである。
明日の朝は6時半に趣味千山を出発し、一風が野宿している鈴蘭高原に向かう予定である。12日の夜中に新潟を発つ一風が趣味千山(郡上八幡町)まで来ると、また1時間半かけて来た道を戻ることになるため、やむなく鈴蘭高原で野宿をお願いした。と言っても一風は野宿することを喜ぶことはあっても苦にするわけはない。
見つけたキノコの写真を撮る一風・ティーピー13日、快晴である。
待ち合わせ場所に行くと、一風が相変わらずの元気な笑顔で我々を迎えてくれる。この笑顔を見ると、私も元気が出る。8時過ぎとあってまだ人はあまり入っていない。車が一台あるだけだ。ここは最近すっかり有名になったのかキノコ採りの人が多い。我々は早々に入山した。
いつものコースを辿る。どこらあたりに何が生えているかが大体分かっているので効率の良い一巡コースを設定してあるのだ。今回、ナラタケが多く見られた。ナラタケといってもsonetaの話では10種類以上あるらしく、確かにここのナラタケは群生というよりポツポツと生えている。しかしどう見てもナラタケには違いないのだ。
他にキシメジ(ショウゴエシメジ)、シモフリシメジ、クリフウセンタケ、チャナメツムタケ、アイタケ、ツバアブラシメジ、ヌメリササタケなどが採れる。とくにシモフリシメジは結構な量が採れた。このキノコは第一発見が肝心で、ひとつ見つけると回りに必ずといっていいほど生えている。色の黒い地味なキノコだから、落ち葉に埋もれていたりしてなかなか最初は見つからないのである。大変美味しいキノコで、このあたりではシバカブリと呼んで皆がこれを採りにやって来る。
しかし肝心のホンシメジが見つからない。なんとか見つけて皆に写真を撮ってもらおうと目を皿のようにして探すが…無い。しかししばらくして弟子の声がした。皆が集まる。…おお、小さな株だがまごうことなきホンシメジではないか!。ついこの間までショウゲンジを見てマツタケだ〜!と叫んでいた弟子にしては上出来である。しかし結局これが最初で最後のホンシメジであった。
昼近くまで我々は散策し結構な量のキノコを採り、とりあえず下山することにした。午後は松林に行かねばならぬ。最後に魚菜所望のベニテングダケが数本駐車場の脇に捨ててあった。お、ちゃんと魚菜チャンのために置いてあるじゃないか・・・と拾っていると、横にいたオッサンが『コイツを食べてみろ、死にたかったらなぁ…ハハハ』と笑った。なかなか適切な解説である。我々をズブの素人と勘違いしている。まさか食べるために探していたとは思いも寄らなかったろう。ちょうど食べごろのきれいなベニテングであった。
途中道の駅で食事をとり、41号線を南下し、白川町佐見にある私の師匠のM氏の別荘(と言ってもM氏は今年年末から街の家を取り払い、ここで暮らすことに決めたようだ)に車を止めた。そしてそこから隣の山に登った。
山は荒れた松混じりの雑木林で、もう少し明るければもっと色々な種類のキノコが生えるのだろうが、少し藪っぽく暗い山である。しかしsonetaの所望するオオムラサキアンズタケを私が見たのはここだけなのだ。
登っていくと、ムラサキアブラシメジモドキという長ったらしい名前の紫色のキノコが目立つ。このキノコはここの村人に『食べられるよ』と言われて食べていたキノコで、最近名前を調べて分かったものである。ショウゲンジもすぐに見つかったが発生は例年よりも少ない。マツタケは勿論、少し当てにしていたホウキタケも無い。私はせめてオオムラサキアンズタケを見つけたいと思い、皆のあとをじっくりと探していった。このキノコは枯れた木の根元あたりに発生する。色が黒っぽいので見つけづらいキノコなのである。
ダメかなぁ、と思い始めた矢先、「そろそろ帰りますか…」と皆に声をかけたとたん、足元で紫色の塊が見えた。でっかい株である。「オーイ!!!」私は大声でsonetaを呼んだ。駆けつけた彼が足元のオオムラサキアンズタケを見て、狂喜している。こんなもので喜ぶとは…マニアとはげに面白き生き物である。その横にも一株。肩の荷が下りた私は正直ホッとした。
オオムラサキアンズタケの大株を手にニヤケルsonetaそのあとコウタケを探しに別な場所に行くが、さすがにそこまで天は甘くなかった。しかしそれでいいのだ。探し物は全部見つかったら面白くないのである。あとに楽しみも残らない。帰りに馬瀬川のほとりの美輝の湯に案内する。ここの湯は温泉嫌いの私にも分かるほどの「良い湯」である。なにせ入ると肌がヌルヌルになるのである。キノコ狩りで疲れた足の筋肉をほぐすには温泉も良いだろう。まさにsonetaにとっては至れり尽せりのコースであったと思う。温泉は二つあり、町営(300円)とホテル(700円)がやっている。温泉マニヤのsonetaは当然ホテルより町営の温泉を選ぶ。私は「ヌル湯」とか「深湯」とかのバリエーションのある温泉が良かったので一風とともにホテルに行く。魚菜は当然300円の風呂でよい。300円でも勿体無いくらいだ。
趣味千山に帰り、採ってきたキノコを庭のテーブルに広げる。なんとも物凄い量である。採ってくるのはいいが、後の処理が大変なのは魚釣りも同じだが、夜遅くまで続く地道な作業も結構楽しいものである。
収穫を選り分ける一風とsoneta。基本的にスキでないとやれない作業だ
ついにベニテングダケが魚菜の口に…この日は食い物がありすぎて、延々と作業しながらビールを飲み、話をしながら茹でたり煮たり焼いたりしたキノコの味見をした。味見といえば魚菜のベニテングの味見はどうなったか・・・。ホイルに包んで焼いたベニテングダケに、醤油を少し垂らして、魚菜はがぶりと食らいついた。旨いものには目の無い魚菜だから、いつかはやると思っていたが、意外にその日は早く訪れた。これで私の仲間が一人増えた。
「う、うまいキノコですなぁ・・・これは」
感嘆した魚菜が祇園のオバン芸者のようなイントネーションで感想を述べる。そうだろう、そうだろう・・・。私は心の中で頷いていた。このベニテングダケは味ではキノコの王様なのである。しかしながら同時にこのキノコは幻覚毒を持つ毒キノコでもある。そして二本を食べ終わった魚菜がしばらくして「気持ちが悪い…」と言い出したものだから、さあ大変。皆の顔色が変った。食べろといってもかたくなに食べなかったsonetaなど「魚菜さん、大丈夫?…」とオロオロしている。ここで魚菜が血ヘドを吐いてぶっ倒れて死ぬと面白かったのだが、そうはならなかった。少し経つと何事も無かったかのように再び晩餐に加わってきた。魚菜に言わせると「少し飲みすぎたかも…」ということであった。人騒がせなヤツである。私は2回食べているが、吐き気を催したことは無い。胃腸毒のムスカリンなどは微量のはずである。