60歳
先日1月15日60歳になった。世間一般で言う還暦というヤツだ。私の場合30歳で仕事を始めたから、今年でちょうど会社も創立30周年だった。そして子供たちがやってくれた還暦祝いと会社でも
30周年記念パーティーをやったので、なんだか自然に一区切りついてしまった。区切りがいいからといってそのことに特別な意味は無いのだが、それでも「いよいよあと何年生きられるの?」とか「オレってちゃんとやってきたのか?」などという思考のきっかけにはなる。50歳になった時に書いた自分の文章を読んでみると、人生を振り返りつつもまだ死ぬなんてことは頭に無い。つまり元気そのものであった。しかしこの10年で劇的に変化したのは「体力」である。それなりに身体を鍛えた時期もあったのだが、やはり10年前に比べる術も無い。体力が落ちると気力も落ちるというのは本当だ。釣りやバイクももちろん続けているが、頻度や走るスピードが違ってきた。挑戦する心が「減って」きているのだ。スキーなんて行く前から億劫になっている。こうやって書くことも、目が疲れるのはもちろんだが、心が躍らなくなってきている。どんなことでも「気力」というあふれ出る源泉から来ているから、その泉が枯れ始めると、何もかもが減衰し始める。何をやっても特に楽しくなくなってきたのは、まさにそういった理由からだ。もちろん今でもさほど元気が無いわけではないが、10年前と比較してみると、ってことだ。しかし、やはり
これではいけないのだ。
この先10年を考える。10年後私は何をしているのだろう・・・いや、何をしていたいのだろう。そう考えた時に、実は何も浮かばない。20代や30代の頃はやりたいことや夢や目標がいくつかあった。10年後はこうしていたいとか、20年後はこんな人間になっていたい・・・とか将来の風景を描いて生きてきた。いや、ついこの間までは、そんな具合に生きてきたのだ。ところが最近になって、自分自身の目標だとかやりたいことが、急激に減少してきたのである。10年後の私を想像しているうちに・・・実はあることに気がついてきた。つまり、少なくとも「自分自身」がやりたいことはもうそんなに無く、欲しい物もそんなに無い
、ということに。
話は変わるが、昔私がブラジル旅行をした時に、ブラジリアのソアレス一家に大変世話になった。旅行先で出会ったまったく見も知らぬ23歳のヒッピーまがいの若者(私)を、娘のいる家に泊めてくれて、いろいろ親切にしてくれた。そのおかげで私は言葉にならないくらいの思い出
を得ることができ、それによって大げさに言えば今の自分があるとさえ思っている。そして一年半ほど前に、偶然アリューというシエラレオネ国籍のアフリカ人と知り合った。最初は英会話の先生として知り合ったのだが、一緒に食事に行ったりして話しているうちに、徐々に彼のことが昔の自分と重なって見え始めてきた。彼はヒッピーまがいの当時の私とは違ってもともと国費留学のエリートではあるが、常に自分の人生を探しているという意味では同様だった。私は彼の夢を聞き、やりたいことを知り、即座に協力を申し出た。会ってまだ3ヶ月も経っていなかったが、私の中の自分がそうさせた。その自分とはブラジリアのソアレス一家から受けた恩恵を感謝する自分である。つまり私はソアレス一家への感謝をアリューに対する投資という形で表現したのである。見知らぬ国で一生懸命もがいている
真面目な若者は、誰かが助けるべき存在なのである。
偶然・・・と書いたが、人生の出会いというのは偶然かも知れないが、その偶然に関るかどうかは偶然ではなく必然である。このことはまたいつか書こう。
その時はそんなに意識はしていなかったが、今になって「これからの自分」を考えた時に、そこにひとつの答えが見つかった。今後10年間の私・・・それはもう今まで自分が受けた恩恵をどうやって人々に返していくのか、ということに尽きるのではないか?。自分自身に欲しいものも無いなら、人にその人が欲しがっているものをあげればいいじゃないか!。自分の老後のために金を蓄えて・・・なんてことを考えていてはダメだ。だいたい貯めようなんて思ってもそんなに貯まるものじゃない、金なんて。使えばいいのだ。簡単に言えば今まで自分のために使ってきた金を、人に対して使うということだ。
誤解されたくないので書くが、もちろん金銭面だけではなく、精神的にも人を助けることはできるが、
手段や道具としてみると金が一番分かりやすいからこう書いているのだ。
もちろんギターを教えて欲しいという人には教えるし、バイクの乗り方も教えますけどね(笑)。
かくして私はアリューに(自分としては)相当額の投資をした。投資をしたというと聞こえがいいが、何のボンドも無い、一般的には相当リスクの多い投資である。しかし私は彼という人間を信用したのである。彼は今年仕事(市役所の国際課の通訳)を辞め、シエラレオネに3ヶ月間の帰国をした。そこで貿易会社と金、ダイヤの採掘会社などを立ち上げるのである。・・・ハハハ、面白いじゃないか!。この歳になってこんなことに首を突っ込めるなんて、最高だ。孫たちと遊んでいるのもそれはそれで楽しいが、それとは違った楽しみも必要だ。アリューは近未来に現地フリータウンにホテルを建てるという夢を持っているから、それが実現したら英会話クラスのみんなで遊びに行く予定である。
ざっと最近の私の行動の一部を書いたが、つまりこれがこれから約10年の私の生き方である。人に与え、自分も得る。もう自分だけで楽しむ時期は過ぎた。というか、十分に楽しんだ。だから夢のある若者たちに自分ができることを協力し、あとは(少し足腰が弱った私を)引っ張って行ってもらうのである。どう?なかなかいい考えでしょ?(笑)。
20110420