映画の話 2009


 今までのこの映画評論を読み返すと、私がミュージカルも含めて音楽が主題になった映画の殆どに◎を付けていることが分かる。このように見る人によって感動する傾向が違うわけだから、作るほうも大変だよね。

<2009年度観た映画> 

監督・題名 one shot

寸評

フィリダ・ロイド

 この閉塞感一杯の世の中で見る映画はこれしかないだろう。ABBAの22曲のヒット曲が次々に流れるジュークボックスミュージカル。ストーリーも単純で分かりやすく楽しいし、何よりもメリル・ストリープを取り巻く3人の男たち(写真順にステラン・スカルスゲールド、コリン・ファース、ピアース・ブロスナン)がそれぞれに個性的で我々の年代に近いので面白かった。観客年代で言えば中高年向きのミュージカルだろう。それにしてもメリルストリープがこんなに歌が上手いとはね。
デビッド・フィンチャー  スコット・フィッツジェラルドの小説の映画化。ブラッドピッドとケイト・ブランシェットの若返りと老化…そのメイクも見所だね。思っていたより淡々とした作品で、後半にかけて少しずつ盛り上がってゆく。人生の出会い別れをアイロニックに表現している、一風変わった作品である。「ツウィスト&シャウト」が突然流れたり、ブラピがトライアンフに跨ったりと、演出もなかなか面白かった。最後がどうなるかということもストーリー的には一番興味があったが、ま、予想に近かったとだけ言っておこう。
ガブリエレ・ムッチーノ 7つの贈り物  途中からウイルスミス演ずるベンが何をしようとしているのかが分かってしまうが、それでもジーンと何かが胸に湧き起る。自分が「良い人」と確信した人に贈り物をする…というのがなんとなくアメリカ人っぽいが、自分が死ぬ時にはやはり何か人のためになりたいと思うのは人情だろう。「俺も死んだら誰かに腎臓でもやろうかなぁ」と言ったら、じょしゅが「ドナー登録は50歳までだよ!」ってさ!。少しシラケた。
ジョン・ウー  日本で言えば源平合戦みたいなものなんだろうなぁ。勝った方が後世、良い評価を得て、負けたほうが悪者になる。この映画で言えばあたかも曹操が悪者で、小国の同盟軍の劉備や周瑜が正義…みたいな感じで作られているが、、実際歴史上の有名人(諸葛孔明、関羽、張飛など)を従えているのも有利に働いているのだろう。ま、映画であれば仕方ないとも言えるけどね。公平に書いちゃうと面白くなくなるんだろうなぁ。
 表題に「俺は迷っていた、人生の締めくくり方を。少年は知らなかった、人生の始め方を。」とあるが、この映画を端的に表現しているだろう。一人のハードボイルドな頑固オヤジとそれを取り巻く親族やら隣人。そしてそこに象徴として存在するフォードの72年製グラン・トリノ。これは古き良き時代のアメリカの追憶でもある。さすがにこんなカッコイイ人生の終わらせ方は無いとしても、そろそろ歳をとってきた我々の心にグサリと突き刺さる映画ではある。
ロン・ハワード  ダビンチコードの続編。バチカンの司教の死をきっかけに起こる謎の後継者殺人・・・またしても我々のようにキリスト教徒では無い者にとっては少し分かりにくい展開であったが、手に汗握るという意味では総体的に前作よりは面白かった。天使と悪魔とは宗教と科学という一見相容れないものに対する象徴的な表現のようだが、どちらが悪魔でどちらが天使かは今のところ誰にも分からない。
アレックス・プロイヤス  「アイ・ロボット」のブロイヤス監督作品,ニコラスケイジ主演ということでさっそく見に行ったが、謎解きはもう少しゆっくりやったほうがいいですね。この数字の羅列を見てすぐに気がついてしまうってのはちょっと出来すぎ。こういうのは観客にも考えさせなきゃね。「おお、そうだったのか!」という感激がない。ニコラスケイジも最近は「ナニをやりたいのか」よく分からないなぁ。こういう映画にはあまり役として合わないような気がするのは私だけか?。
ケン・クワピス  ジェニファーアニストン、ドリューバリモア、スカーレットヨハンソン、ジェニファーコネリーなどのきれいどころが出ているので見た。同棲して7年、結婚してくれない男。学生時代からの付き合いが長く 惰性で結婚してしまったカップル、友達としては付き合えるけど結婚は出来ないカップル、相手が欲しくて欲しくていつも追っかけしては振られている女・・・さまざまな恋愛模様を女性の立場から描いている。とにかくこの映画は出だしが面白い。久しぶりに笑わせてもらったよ。
アンヌ・フォンティーヌ  フランス映画らしい、淡々とした内面描写の中でストーリーが展開してゆく。予告編でショパンの「別れの曲」が使われていたので、どのシーンで使われるのかが私的には焦点だったが、何のことはない、最後まで一度も流れなかった!。つまりなんとこの曲は予告編専用だったのだ。映像的には左の絵が一番印象に残る場面だったから、ここでこの曲を使っていれば更に良かったと思うのだが・・・なんだかコース料理を食べに行ってメインディッシュが無かった感じ。
ロバート・ルケティック  アメリカ映画らしい、と言うよりアメリカ映画でしか見られないセクシュアルコメディー。もっとハチャメチャな映画を想定して期待していたが、少し物足りなかった。それにしてもどんなことでもストレートに表現するってことは・・・昔は良くないことだと思っていたけど、最近そうでもないよね。人がそれをどう思うかということより、自分がどう思うかの方が大事なんだ…という意味でね。
ジャウム・コレット  私はもともとサスペンスも含めた恐怖映画好きだが、最近の作品はたいてい途中でうんざりしてしまうようなストーリー展開だったり、後味が悪かったりすることも多く、最近はあまり見なくなった。この映画は途中までは意図があまりよく分からず、どんな落としがあるのかいろいろ考えていたが、結局それが私の想像、想定を超えていたという意味ではなかなか面白かった。しかしこの映画はR15であるのに主役のイザベルファーマンが12才…コレっていいの?
星田良子  ま、ストーリーはともかく、この映画も竹中直人がめっちゃ面白いですね。私はもともと彼のファンなのですが、この役者は、お世辞でも冗談でもなく、天才だと思います。良い喜劇役者は必ずペーソスを併せ持っていますが彼もしかり。笑わせてくれるのですが、そこに笑っている自分を見つめる悲哀が感じられるのです。それと彼が出演する映画って、なんだかどっかの高校の演劇部の悪ふざけみたいなモノを感じるのですが、そこのところがまた面白いんです。
ドミニク・セナ 南極の基地に起こる殺人事件をテーマにしたサスペンスなのだが、どうもイマイチ。どこで撮ったのかなぁ・・・とか、このブリザードはCGなんだろうなぁ・・・なんてぼんやり心の片隅で思いながら観るってことは映画に没頭していない証拠。映画の早い時期にじょしゅは犯人を当てていた。何故分かった?と聞くと、カンだとの返事。フ〜ン。
犬童一心  ご存知、松本清張の社会派サスペンスの映画化。冬の能登半島の景色も良かろうと思って観た。敗戦国の犠牲になった女達と新しい日本の胎動の狭間で揺れる愛憎。こんなことも多分本当にあったんだろうなぁ・・・と妙に感慨深くなってしまう気分。そんな私の目の前に、吹雪舞う荒れた海にそそり立つヤセの断崖が印象的な映画でした。
ローランド・エメリッヒ  あまりにギリギリのセーフ場面に思わず笑いが沸き起こってしまう。マヤ文明の予言した2012年に惑星直列の影響で地球に大激震が起こると いう想定で、これでもか、これでもか!というCGのスペクタクル映像が全編を支配している。面白いのは世界を救うノアの箱舟が建造されて保管されているのが(スイスではなく)中国なのだ。いかに今のアメリカが中国を大事に思っているのかが表れているではないか。日本なぞとっくに海の底に沈んでしまって、跡形も無い(笑)。
ケヴィン・グルタート  上の映画はじょしゅとミナマリとシーで観たが、この映画だけはいつもミナと二人だ。あとは誰も観ようとしない。結論を言うと、なかなか単純明快で面白かった。裁かれるのも保険会社の査定部長で、あれこれと客に難癖をつけて保険金を支払おうとしないヤツなので・・・一般的な勧善懲悪ラインに乗っているのが少し安心して観られる理由なのである。今までは「何故コイツがここまでやられなければならないのか・・・」という疑問符が付く場合もあったからね。
若松節朗 山崎豊子原作の小説の映画化。人の生き様を多様に描いた好作品で、もちろん主役の渡辺謙の圧倒的な存在感がこの映画のバックボーンとなっている。思うに、役者というのは虚を演じるのではなく、自分の心や意識の中の実の部分を演じてこそ観る人に感銘を与えうるのだと感じた。簡単に言えば、小人物は大人物の役を演じられないように、自分の中に無いものは演じられないのだ。石坂浩二にしても 善人、悪人、いろんな人物を演じて、それがけっこう板についているのは、彼が清濁併せ持つ人物だから可能なのだろう。
オラトゥンデ・オスンサンミ この映画はある心理学者の話を元に作られ、実際の映像を交えながらアラスカのある町に起こった実話を描いているという。信じるも信じないもあなた次第・・・と最初に断っているが、私は実際UFOを見たことがあるのでこの手の話を全く信じないわけではない。しかしやつれ果てた心理学者の顔のほうがストーリーより怖かったのと、息子も含めたそれ以外の人々の協力が全く得られていないという事実に、この映画の信憑性が少し揺らぐのである。
     
     
     
     
     

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