40年ぶりのアマチュア無線日記
プロローグ
ふと無線をはじめたくなったのは、船で国際VHFや漁業無線を聞こうと思ったのが発端だ。で、とりあえずどんな周波数も聞けるマルチバンドレシーバー(AR8600)を買ってみた。500KHZ〜1200Mまで今どんな電波が飛び交っているのだろう。周波数帳も買ってとりあえずいろんな電波を聞いてみたのである。
海に行って27M帯の漁業無線も聞いてみた。そのうち機械の後ろに付いているバーアンテナでは物足りなくなり、受信用のアンテナをベランダに取り付けた。ハムバンドも聞いてみたが、やはり専用機ではないため、物足りない。主にエアーバンドやらタクシー無線、近所から聞こえてくるコードレス電話・・・これは盗聴だから 、なんだか後ろめたい。果ては通常は聞こえない各地のFM放送、夜になると聞こえてくるBBC、VOA、ロシア語やら中国語、韓国語の放送・・・ま、最初は面白かったがすぐに飽きてしまった。ただ、こうやって無線電波を聞いているうちに、なんとなく昔の記憶が蘇り、そう、なんとなく『今のアマチュア無線ってどうなっているんだろう?』と興味を持ち始めたのである。
何気なくオークションを覗いていると、けっこうたくさんアマチュア無線機が出ている。中でもYAESUのFT747の中古品と古いケンウッドのモデル(TS430)の新品が電源、アンテナチューナー付きで出ていたので落札してみた。私がやっていた頃は真空管式のトランシーバーだった。当時は製品を買う金も無かったので自分で作って電波を出していた。無線機もそれ以降トランジスターになり、ICになり、飛躍的な発展を遂げているはずだ。私としてはいきなり40年もの年月を飛び越して現在の最新鋭機を買うより、その中間くらいに発売された古いモデルから慣れてみよう・・・という感覚でそうしたのである。それにその時はアマチュア無線を再会するつもりも無かった。ただハム専用機でいろんなバンドを聞いてみようと思ったのである。
ところがこのケンウッドのTS430・・・コイツは実際魔物であった(笑)。昔取った杵柄で、スイッチ、ダイヤルなどは一部を除いてだいたいの使い方は分かった。懐かしの7Mバンドを聞いてみたら・・・しょぼいマルチバンドアンテナにも関らず、電離層の状況も良かったのだろう、北海道から九州まで・・・けっこう明瞭に受信できるではないか。おまけにハムバンド特有のザーッという懐かしいノイズ付きである。RFゲインを絞り、AFゲインを上げて、IFシフトをずらし・・・そうそう、こうやって混信から電波を拾い出すのだ。フェージングを伴った懐かしい40メーターバンド・・・いつしか私は夢中でワッチングしていた。そして当然といえば当然な話だが、電波を出したくてたまらなくなった。
昭和41年の私のアマチュア無線免許証だ。今年6月、親父が探し出してくれたものである。中学3年の秋に試験を受け、パスした。 今と違って当時はまだ講習で免許証がもらえる制度もなく、年に二回の試験を受けるしかなかった。中学生の合格は珍しかったとみえて、開局したらラジオ局が取材に来たことを覚えている。再免許を取るにはこの免許証番号が必要なのである。当時は1級、2級、電信級、電話級と4つに分かれていたが呼び名が変わり、1級、2級、3級、4級になっている。それぞれ出られる周波数と出力が決まっている。家に大きなダイポールアンテナを自作し、受信機も送信機も真空管で自作し・・・なんだか大変なようだが当時は自作のほうが当たり前であった。子供が無線機を作ってしまうわけだから、当時はアマチュア無線という趣味が 知的で高尚な「キングオブホビー」とやや敬意をこめて呼ばれていたのだ。ちなみに私も中学2年から受信機やら送信機を作り始め、夏休みの工作で学校に出したら技術の先生が狂喜してくれたという思い出もある。私は昔からとにかく『作る』ことが好きな人間だったのだ。交信で一番の思い出は夜中に九州、四国、近畿、東北、北海道などの局の面々とラウンドQSOと言って順番に交代でおしゃべりをしてゆく交信をしたことだ。最初私が九州と喋っていると、次々とブレイク(割り込み)で話に加わってくる局が増え、日本全国を股にかけた一大ネットワークが出来たのだ。 そう、インターネットも無い時代で、特権的にハムだけがこんなネットワークを所有することができた。交代で天気や電波の話をして、そして電波状況は刻々と変化してゆくものだから、だんだん聞こえなくなる局も出てきて・・・「・・・73・・・さようなら・・・」とノイズの中で消えてゆく声 が今も耳に残っている。そんな思い出をこのケンウッド機が私に思い出させてくれた、というわけです。
ハムと言えばアンテナです。いや、何が大切かって言って、アンテナが一番大切なのです。送信出力よりアンテナが大切です。じゃ、タワー作って八木アンテナ乗せろよ!と言うかもしれませんが、今の私にはそこまでやる気にはなれません。トランシーバーでもそうでしたが、やはり順番があるのです。自分で組めるアンテナ、まずはこれが私の第一目標。幸い2階のベランダがあるので、そこに足場管を利用してグランドプレーンアンテナを立てることにしました。
この金具が苦労したところです。ベランダを傷つけることなく、いつでも取り外しが出来、なおかつ強風にも耐える・・・こんなことを考えて作りました。
ハムの免許は持っているので開局申請をするだけでOKです。総務省のHPからネット申請が出来ます。最初分からないところでつまずきましたが、3度目に受理され、手数料を納付すれば10日ほどで開局免許状が届きます(私の場合は取りに行きましたが)。なんだか 6月に受信機買ってから8月。あっという間に、気がついたらハムを開局していた・・・って感じです。
この間にトランシーバーももう一台買いました。FT950というYAESU製品です。最初のTS430はハイエースに積んでモバイル運用するつもりです。トランシーバーはいろいろ迷いましたが、ま、10万円以下から100万円ぐらいまでいろいろあるのですが、これにし てみました。 なにせ最近の事情はまったく分かりません。CQ誌も買って、いろいろ勉強しましたが、機械的には昔と比べてずいぶん進歩しているみたいですね。 で、QSO(交信)はまだしていません。なに喋っていいのか分からないから(笑)・・・。とりあえず電波が弱いと言われたくないのでアンテナを良くしてから、交信します。それにQSLカードと言って交信したらカードを発行しなければなりません。日本アマチュア無線連盟(JARL)にも加盟登録します。
8/22 アンテナ地上高アップ
最初は3メートルのパイプだったのですが2メーターの三種類のパイプ(それぞれ48mm、42mm。38mm)それを繋いで5メーター40センチの長さにしたのです。それぞれ写真のように穴を開けてネジ切りし、固定しました。これでアンテナのラジアル部分が屋根より高くなりました。
いよいよ電波を出さない理由がなくなってきましたね(笑)。誰かのCQコールに応答するか、自分からCQを出すか、それに迷っているんですよ、ハハハ。
8/27 3.5M 初交信!
初QSO(交信)しました!夜中に7Mバンドから3.5Mバンドに周波数を落とすとずいぶん閑散としている。茨城県つくば市からCQを出しているJH1局があったので応答してみると「ハイ、JA2LHSさん、どうぞ!」と来た・・・おお、電波が飛んでいる!。実は3.5M帯はアンテナのSWR(インピーダンスマッチング)が余り良くなかったので自信がなかったのだ。だから飛ばなきゃ飛ばないでイイわい!と応答してみたのである。さすがに緊張しました。最初に電波を出した40数年前と同じくらい緊張しましたが、喋るのはさすがに大人になっているので(笑)、汗だくでなんとか無事QSOを終了しました。5、6分だったでしょうか?。了解度も信号強度も59というレポートだったので、このアンテナとしては万々歳です。相手もJHのコールサイン(JAの次がJH、私の時代にすでに登場していた)だから私と同年代だった。40年近く細々と続けています・・・と言っていました。
ところで台風シーズンに備え、アンテナを補強しました。ベランダの手すりに38mmの鉄パイプで2点固定しました。これで多分大丈夫でしょう。アースも太い線に変え、2本打ち込みました。ま、こういうことをごちゃごちゃやるのが好きなんですよ。
ハム通信を聞いていると最近はよく韓国が聞こえる。なんとチリやアルゼンチンとスペイン語で交信している人もいる(もちろん相手は入感しないけどね)。・・・う〜ん、ヤリてー・・・5エレメントの八木アンテナに1KWだって言ってたなー・・・う〜ん、とりあえずタワー建てる?それから2級免許?
09/09 グアム、サイパン局と交信!
電波というものは摩訶不思議なものである。北海道や韓国から強く入感しているのに、同じ岐阜の局が弱くしか受信できない。地球を取り巻く目に見えない電離層という反射層がビリヤードのクッションのように電波を遠方まで伝播させるのである。目に見えぬ電波を発見し、それに声や映像を乗せて遠方まで届けるということを発想して実現した人は本当に偉いと思うが、アンテナとか送受信機を作ったりしてそれを自分で楽しむことができるのがアマチュア無線家だ。自分の声が北海道や九州、果ては外国まで飛んでゆくということに興奮を覚えるのは人間の性である。電離層の状態は太陽黒点やその他の状況で大きく変わる。太陽の黒点が多い時期(活動が活発な時期)は強力な電離層が発生し、電波の伝播状況が非常に良くなるから遠方の局とも話ができるのだ。発信周波数によっても伝播状況が違う。比較的安定的に国内通話ができる周波数が7MHz帯だ。季節的に7MHz帯の状況が悪くなる時に3.5MHz帯が良くなることがあるし、21MHzや28MHz帯は電離層反射が優れていてDX(海外)局とも交信できることが多い・・・HF帯だけでもこれだけバリエーションがあり、それぞれの電波の特徴を駆使して交信を行うのも興味深いのである。 一応今日までは7Mと21Mで北海道の局と交信した。
ところで先日、グアム島と交信した。交信後に調べたらコールサインKH2だからグアム島の局である。こんなアンテナでグアムまで届くのが21MHz帯の面白いところだ。前日にウクライナやカザフスタンの局がCQを出していたので送信したが届かなかった。だからほとんど諦めモードで発信したら"JA2LHS? thanks for your calling ,your signal is 59"と来た!。やったね!。ホントかよ・・・。誰かがイタヅラしてんじゃないの?とも思ったがどうやら本物で、コンテスト中でした。 次にAH局のCQに応答するとこれも返事が返ってきた。アメリカ圏のコールサインだがどこか分からない。これもあとで地域を調べるとサイパン島のコンテスト局だった。つまりこの日のこの時間帯は南方の島々との伝播が開かれていたってわけだ。それにしてもあっさりと海外局と交信してしまって・・・なんだか久々に興奮しました。
本格的に21MHzのアンテナを建ててやろうかなぁ・・・。とりあえず先日、9月26日の3級試験講習を申し込んできました。
9月の26日に3級のハム講習を受講しました。思ったより多くの人が受講に来ていてびっくりしました。と言っても40名ほどですが。講習は簡単で、誰でも受かります。私の後ろが小学5年の女の子で、「免許証が新しくなってカッコ良くなったから取りに来たの」と言いながら2年前に取った4級免許を見せてくれました。なんでもやっと運転免許証みたいにカード形式になったようです。とりあえずこれで50Wまで送信出力を上げることができます。モールス符号も試験に出ますので一応覚えたし・・・。
で、やっぱりアンテナです。一応今のところ周囲の人々をあまり驚かせない、小さめのアンテナを考えているので逆に選択肢が増えてしまうのです。ネットで調べてループアンテナも買ってみましたが、最初のグランドプレーンのほうが受信も送信も良かったです。強いて言うなら高層マンション向けでしょうか。
その前に指向性のあるアンテナにも対応できるようにアンテナローテーター付きの基台をアルミ脚立で製作しました。
天板に穴を開け下部にもローテーター台を取り付けます。
するとこんな感じになります。下の写真の上部にあるローテーターのコントローラーで電波の方向にアンテナを回すということになります。たとえばサイパンとかグアムだったら南に向けるわけです。
で、注文したMQ-1ハイブリッドアンテナが到着しました。確かアメリカ製で14M、21M、28Mのマルチバンドとしてはとにかくコンパクトなのが特徴です。立体的なリフレクターにも特徴があります。
到着したアンテナは部品がすべて新聞紙に巻かれ、取り出すのが一苦労です。説明書どうりに一人で組み立てました。
これがローディングコイル。短縮アンテナの心臓部です。一人では危ないので息子に来てもらって二人で設置しました。
5メーターの物干し竿を咬ましたので地上高10メーターとなりました。横のグランドプレーンと同じくらいの高さです。さて、このアンテナでどこまで交信できるのでしょう・・・楽しみです。
脚立自体が倒れるのを防ぐ意味でパイプで補強します。設置が10月の初めでしたが、それまでのアンテナでは届かなかったインドネシア、フィリピン、ロシア等約3000km圏内とは交信できました。現在21Mhzはあまりコンディションが良くないのでなんとも言えませんが、相手が八木アンテナなど強力なアンテナを持っている場合は繋がるようです。今のところ海外局はサイパン、グアム、パラオ、インドネシア、台湾、フィリピン、ロシア(アムール)です。早く状況が良くなると面白いのですがね。